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最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)427号 判決 1962年5月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人天野郷三の上告理由第一点について。

仮登記権利者の地位を保全するための仮登記制度の本旨に照すときは、抵当権設定の仮登記がある不動産につき第三者に所有権移転登記が為された場合においても、仮登記権利者は依然として、仮登記義務者に対し、仮登記に基く本登記手続を請求することができるものと解するを相当とする。また仮登記の順位保全の効力は、現在の登記名義人たる第三者もこれを認容すべき義務あるものというべきであるから、抵当権の仮登記権利者は、その第三者に対し直接本登記に協力を求めることも妨げないと解すべく、すなわち、その第三者も本登記義務を負い、仮登記権利者は右第三者又は前記仮登記義務者の何れか一方に対して、本登記を請求することができるものと解するを相当とする。所論引用の大審院大正四年五月一四日判決において、仮登記権利者は現在の登記名義人たる第三者に対してのみ本登記の請求ができるとした見解はこれを採用しない。それ故前段の判示と同趣旨に帰する原判決は結局正当であつて、所論は採用できない。

同第二点について。

原審の認定は挙示証拠によつて首肯でき、原判決に所論の違法は認められない。所論は畢竟、原審の専権に属する事実認定、証拠の取捨判断を非難するものに帰し、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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